隠岐島前エクスペディション5DAYS


「お天道様、流石にやりすぎではないでしょうか。ちょっと勘弁してください。」
1週間前、アラスカで太陽を渇望していたのが懐かしい。ここ日本では、日が沈むと安堵した。

今年も隠岐島前にやってきた。黒潮が島に当たっているのか、海がとんでもなく青く綺麗でひんやりと冷たい。
アラスカの海岸氷河の青には度肝を抜かれたが、黒潮の青もまた魅力的なのだ。

透明度の高い海と地形の楽園、隠岐島前。岬を回り込んで外海に出るとすぐに、隠岐ワールドは全開となる。
アーティスティックで雄大な壁、魅惑的な洞窟が絶え間なく聳え続ける。僕(大瀬泰志)も島の北側は始めて訪れる。どの壁を見上げて、どの洞窟に入り込もうか。隠岐島前を初めて訪れたゲストと僕が、その圧倒的な景色にそわそわしていると、メインガイドの大瀬志郎が淡々とアナウンスするのである。

「その調子で写真撮ってたら初日でカメラのバッテリー無くなっちゃいますよ。それと、そのクラスの洞窟は全部入っていたらキリがないので割愛させていただきますーー。」

これらの壁や洞窟が、もしもアクセスしやすい本州の海岸線にあれば、なんちゃらの壁、洞窟と名前がつけられ、人で溢れて大変なことなるだろう。だがここは隠岐島前である。この島において彼らは名もなき壁、名もなき洞窟にすぎないのだ。彼らを見上げるのも、僕たちカヤッカーと隠岐ローカルの漁師くらいのものだろう。観光船も、ここには来ない。

そして、そんな一流選手たちが無名となってしまう隠岐島において、名前を持っている魔天崖や通天橋などが凄まじいことは語るまでもない。

「期待してもらってもいいですよ。シーカヤックから見る隠岐島前の景色は想像を軽く超えてくるので。」
ガイドにとって出発前になかなか発することのできないセリフを、気軽に言わしめる隠岐島前はやはり最高のカヤックフィールドのひとつなのでした。